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2007年12月29日 (土)

女性自衛官の人権裁判-加害自衛官、不当にも不起訴!

以前にも何回かご紹介している「女性自衛官の人権裁判」。現在なお札幌地裁に民事訴訟が係争中です。一方、航空自衛隊千歳地方警務隊が捜査していた刑事の扱いが12月27日札幌地検で決まり、不当にも不起訴となりました。以下、記事と弁護団声明、支援する会声明をご紹介します。

0005 1)新聞記事
■ 朝日新聞(2007年12月28日 金曜日 朝刊 道内14版 25ページ)
「わいせつ行為」同僚男性不起訴
  女性自衛官訴訟
航空自衛隊北部航空方面隊の道内基地に所属する女性自衛官(21)が同僚の男性自衛官からわいせつ行為を受けたとして国家賠償を求めている訴訟をめぐり、札幌地検は27日、空自千歳地方警務隊が強制わいせつ容疑で書類送検した男性自衛官を不起訴処分とした。女性自衛官の代理人を務める弁護士は、検察審査会に不起訴不当の申し立ても検討するという。
 この問題では、女性自衛官が深夜の基地で泥酔していた男性自衛官に無理やり体を触られるなどしたとして、国に慰謝料など約1115万円の賠償を求めて今年5月に提訴。国側は事実を否認し、争っている。

2)弁護団声明
■ 加害者不起訴処分に対する声明
          女性自衛官人権侵害・国家賠償請求訴訟弁護団
             弁護士  佐  藤  博  文
札幌地方検察庁は,昨年9月9日午前4時30分ころ北部航空警戒管制団の北海道内基地において発生した女性自衛隊員(原告)に対する強制猥褻被疑事件について,12月27日,不起訴処分を決定した(朝日新聞12月28日付朝刊)。

不起訴の理由は,証拠不十分とされる。

しかし,事件発生直後,原告が部隊上司に被害を訴え病院への診察を求めたのに,上司を含む複数の男性隊員の同行を条件にしてこれを事実上拒み,それどころか逆に,深夜に無断で犯行現場(ボイラ-室)に行ったとし,あるいは飲酒をした疑いがあるとして,原告を懲戒処分の対象として取り調べ,外出制限などの不利益を科し,犯罪被害者としての保護も捜査も行なわなかった。警務隊が捜査を開始したのは,事件から半年も経った本年2月26日のことであり,検察官送致に至っては,原告が5月8日に民事訴訟を提起してからのことであった(5月末)。

以上の経緯を見るならば,検察官の証拠不十分を理由とする不起訴決定は,事件後すみやかに原告の保護と厳正な捜査を行なわなかった基地の行為を追認するものと言わざるをえない。公益の代表者(検察庁法4条)である検察官は,このような部隊による組織的な犯罪隠蔽行為に対してこそ,徹底的に追及し,公開の法廷で真実を明らかにすべき責任がある。そうでなければ,圧倒的な組織力の前には,個人の基本的人権を保障することは不可能に等しいということになりかねない。

原告と弁護団は,今回の不起訴処分に到底納得できないので,「民意を反映させてその適正を図る」ために(検察審査会法1条),札幌検察審査会に審査申立を行う予定である。また,すでに4回の弁論を経た民事訴訟については,被疑者の犯罪行為と部隊ぐるみの隠蔽行為を明らかにすべく,引き続き全力を尽くすものである。

今後とも,原告への激励とご支援を心からお願いするものである。

以上

3)支援する会声明
  ■声明文
 私たち「女性自衛官の人権裁判を支援する会」は、勇気を持ってはじめて自衛隊に在職のまま性暴力被害とその後の自衛隊のいやがらせ、退職強要を訴えて国を提訴した原告を支援し、女性の人権回復を求める会です。

 今回、原告が勇気を持って告訴したこの強制猥褻事件が、「不起訴」処分になったことを知り、被害者の人権に視点を当てた正しい「処分」をされていないと大変残念に思い、いくつかの問題点をあげさせていただきます。

 私たちは、実際に被害者である原告と出会う中で、彼女の受けた被害のひどさの事実、被害を訴え出ても被害者としては扱われず、自衛隊という組織が形だけの精強さを唱え現実にある人権侵害を認めず、あるはずがない性被害を訴えるトラブルメーカーとして、職場でもあり、生活の場でもある基地内の同僚や上司から、無視・疎外・排斥を受ける辛さと日々闘っている現実を見てきました。

 この事件の特殊性は自衛隊という組織のあり方、特殊性を抜きには考えられません。「精強さを保つ」と言いながら、その内容は、女性自衛官の地位が建前として男女平等であっても、体力的には男性自衛官に「劣る」 とされることであり、たとえば仕事内外を問わず飲食時に「侍らされる」ような「女性としての役割」を担わされ、「性的対象物」とみなされることが少なからず存在します。女性自衛官はその初任研修の最後に、圧倒的に女性が少数である基地の中では、女らしく気配りをすることの重要性を説かれると言います。

 もうひとつは、上官の命令には絶対服従という秩序や規律の維持が、自衛隊の中では絶対的に優先されていることです。性暴力という人間として大変苦痛な犯罪行為に対しても、大声を上げて逆らったり、強力に抵抗するなどということは許されるべくもありません。

 このような組織のままでは、人権侵害への適切な対処を行う仕組みが整わず、あっても形だけであり、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントが起きても防止できないし、組織のあり方自体が温床そのものとなるのは明白です。

 しかも、被害にあった女性がそれを訴えた場合には、被害の側が責任を問われ、秩序を破ったとして、彼女が自衛隊組織に存在し続ける正当性をも剥奪することができてしまうということなのです。

 今回の事件は、そのような中で起こるべくして起きた事件であり、この事件はこれまで声を上げることができず、隠され、退職に追い込まれた、多数の被害女性たちのセクシュアル・ハラスメント、性暴力事件に連なる初めての告訴でした。

 そもそも、この事件が強制猥褻であって、強姦未遂ではない、という当初の警務隊の判断も誤っています。性暴力被害当事者の声や気持ちに注意を払うことなく、加害者側の言い分を一方的に取り上げた大変偏った判断であったといわざるを得ません。

 現実の法秩序が、人格の重要な核をなす性の尊厳が蹂躙されることの重大さの認識に目を向けず不十分な判断がされているか、また身体の負傷の軽重、抵抗の状況のみに証拠を求めることがどれほどの女性の人権の侵害になるのか、というような問題点にもしっかり目を向けた「裁断」をいただきたかったと考えていましたが、この結果はきわめて残念です。

 原告と弁護団は検察審査会に不服申し立てを検討しているとのことで、支援する会としても原告の意志を尊重していきたいと考えていることを申し添えます。
                  2007年12月28日
                  女性自衛官の人権裁判を支援する会
                 http://jinken07.10.dtiblog.com/  
                        共同代表:影山あさ子  
                              清水和恵   
                              竹村泰子

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以上ですが、山田としても自衛隊警務隊のあり方に大いなる疑問を感じています。本人の訴えにもかかわらず、半年もの長期にわたり捜査を開始しなかった警務隊のあり方、そして民事訴訟の直後、あわてて送検した態度、これらは自衛隊の組織的隠蔽主義の表れとも受け取れます。警務隊は自衛隊内部犯罪の捜査を公平公正に行えるのでしょうか。自衛隊の命令系統の意思に逆らってでも、憲法と法に基づく正義を執行できるのでしょうか。甚だ疑問です。事務次官や幹部自衛官が逮捕・起訴される昨今、上意が必ずしも社会正義であるとはいえません。任務に携わる現場自衛官の遵法意識が問われます。

なお、民事裁判の第5回口頭弁論は以下の日程等で行われます。支援の傍聴と報告会への参加、原告への激励を心から呼びかけます。

●第5回口頭弁論

 日時 2008年2月7日(木)15:30~

 場所 札幌地方裁判所

●報告会

 日時 2008年2月7日(木)18:30~

 場所 かでる2・7 820号室

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