自衛隊員と「政治的活動」
7月30日付の記事「いわゆる『自衛隊票』はどう動いたのか?その思いは?」にて、自衛隊票についてマスコミ報道では60万余、と書きました。具体的には、例えばスポニチの記事では「現役の自衛官は約24万人おり、そのOBや家族、関係者を含め、佐藤陣営は『50~60万票は集まる』と話す。苦戦が予想される自民党にとっては願ってもない組織票だ」と書かれており、陣営サイドの読みだったと報じています。それを裏付けるのが、当選直後の万歳写真の後ろにかすかに見える選対事務所の横断幕。
ここには「目指(せ?)60万票」と確かに書いてあります。やはりそれくらいを見込んでいたのです。
余談ながら、このスポニチの記事は各地の自衛隊施設での「講話」について「佐藤氏は陸自退職後の2月から、駐屯地を中心とした全国の自衛隊施設を飛び回り、イラクでの経験を隊員に伝える講演を行っている。表向きはその通りだが、実際は票集めの政治活動」ときっぱり書いています。これがフツウの見方ですよね。この点については7月13日付「“ヒゲの佐藤”氏『防衛講話』問題で防衛省から回答来る」をご参照ください。
しかしながら、「自衛隊票」の得票目標ではもっと風呂敷を広げている人がいました。社団法人日本郷友連盟副理事長の勝木俊知氏です。勝木氏は日本郷友連盟ウェブサイトで「防衛関係約100万票の票田」と述べています。ちなみに勝木氏は前回参院選で落選した3名の防衛関係候補について「候補者が全員元防衛官僚」=つまり制服組ではなく背広組だったことで「現役自衛官が選挙にある程度無関心」だったので、投票の際「政党名を記した」か、もしくは「棄権した」と考察しています。そういう側面もあろうとは思います。防衛関係者のなかでは前回参院選の総括の結果、「だからこそ制服幹部を」となったのでしょうね。しかしながら今回、佐藤氏に投じられた票数は既報の通り25万票余。勝木氏の予想のうち、「棄権」した現役自衛官の割合が高かったか、もしくは別の要因があることが明らかになりました。ぜひ更なる総括をすすめて発表していただければと思います。
さて今日のテーマは「自衛隊員と『政治的活動』」です。このことについて、勝木氏の書かれた文章(以下、勝木論文と略します)は興味深いことを述べられています。それは「政治的活動」とは何か?と、「教育」についてです。勝木論文では佐藤氏の立候補にあたり「前途ある1人の自衛官の運命が現役の全自衛官とOBに託されたのである。その負託に応える方策を考えてみたい」としていくつか述べています。
●自衛隊員の「政治的活動」とは?
以前も述べましたが自衛官は「服務の宣誓」で「政治的活動に関与せず」と誓約します。これがどの範囲までを制限しているかは難しいところと思いますが、この「服務の宣誓」によって「現役自衛官のみならずOBにも選挙アレルギーがある」「選挙も『政治活動』の一環として捉え」「触らぬ神に祟りなし」だと勝木論文で述べています。そして続けて「アレルギーを克服」するために「政治的活動」の内容と「選挙制度」への理解を「教育」すべき、と主張しています。勝木論文は「政治的活動」について「2・26事件や5・15事件」のような「国政を左右するようなクーデターまがいの活動や行動を意味する」とし、「国民一般の権利であり義務でもある選挙権の行使や、それに関連する活動を禁止するものではない」と述べています。なるほど、それはそうかもしれません。自衛隊員であっても国家公務員法が一般に規定している制約以上の制限をうけるのは憲法上どうなのか?と思います。同時に「選挙権の行使や、それに関連する活動」を認めるならば、それは政権与党に対する支持活動のみならず、野党とりわけ共産党や社民党などといった「反自衛隊活動」と情報保全隊が規定したような政党を積極的に支持する活動や、自衛隊のあり方に対して意見を述べるような表現活動をも含めて容認すべきです。なお当然ながら、民主社会を武力で破壊しようとする「クーデターまがいの活動」が禁止されることは当然と思います。
●自衛隊員への「教育」とは
その上で勝木論文は「選挙制度」のポイントを理解させ「棄権」しないように教育すれば、おのずと防衛庁関係候補者への個人名投票が集中し有利な状況をつくりだせると結論付けています。それは今回、あまり上手くいかなかったようですが、その「教育」について勝木論文の結びでは「朝礼、終礼、教育・訓練の合間などの機会をとらえ、選挙制度と棄権防止につき教育し、行動するならば、現役自衛官の選挙アレルギーも少しは解消されるのではないだろうか」と述べています。これは「選挙制度と棄権防止」について「教育」すると述べ、問題が無いかの表現をしていますが、実際にこのことが意味することは、自衛隊内部での公然たる「自民党支持拡大運動」に他なりません。
先日、記事の最後で少しふれましたが閉鎖された元自衛官によるブログ「猫に小判~自衛隊内部を滅多切り」では自衛隊の公職選挙法違反事例として「視認情報集め」と「機会教育」を紹介しています。以下は閉鎖後に同ブログのキャッシュを写真で撮影したものです。
これはグーグルのキャッシュなので、画像こそ残されていなかったのですが、実は別のサイトで「閉鎖」を見越してか、画像をダウンロードして残していた人がいまして拝借しました。画像を見ればこのブログの管理者が元自衛官であることが本当であると推測されます。以下が上から順に「機会教育実施記録」「視認情報綴り・表紙」「視認情報綴り・集計表」です。
これを見ると、どうもこの「視認情報綴り」が記録された自衛隊組織は北海道(「民主党・小林ちよみ」とか「共産党・ほっかい新報」とかの記述が根拠)みたいですね。
機会教育実施記録には、具体的にどういう教育をしたかは書かれていませんが、投票したら中隊に報告せねばならないことと、このような「教育」を既に3回行っていること、などがわかります。
その上で「教育をしたことがある」と述べる元自衛官氏が教育の内容について「自○党にいれろ」(まあ自民党でしょうね。自由党ではないだろうと推察します)だと証言していることは重い証言です。そしてまた、このことは先に述べた勝木論文で述べられている内容とも合致します。実際にこのような「教育」活動が行われ、「視認情報」ということで情報収集活動が隊員一人一人に指示されているとすれば、これは大問題です。情報保全隊に留まらない24万人の情報収集ネットワークが構築されている、ということです。今後、自衛隊内部からの改善によって真相が究明されることを期待します。
ただし、このように100%の投票率を誇っても実際にはあのような結果です。勝木論文で述べているように「政党名」か「棄権」か、または「他党」ということもあるでしょう。これは、どんなに「教育」したとしても、自衛官一人一人の良心までは縛りをかけられないことの証明のように思えてなりません。自衛隊が少なくとも海外派兵型、米軍追従型にならない、真に祖国防衛・災害救助のための民主的な組織であってほしいと願う自衛官が広がれば、自衛隊の「民主的改革」も夢ではないかもしれません。
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